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Liner Notes

『“予測不能な秘密基地”それが、Monthly Mu & New Caledonia』

門口夢大(Vo)、鈴木龍行(Gt)、若林達人(Gt)、小笹龍華(Ba)、武亮介(Dr)による5ピースバンド、「Monthly Mu & New Caledonia」。数々の超常現象やオカルト情報を取り上げる雑誌「月刊ムー」と、天国に一番近い島と呼ばれるリゾート「ニューカレドニア」を並列に記したバンド名から、固定した音楽性をイメージすることはなかなか難しいだろう。これは悪く書いているのではなくて、むしろ、月刊ムーとニューカレドニア?というクエスチョンが最初に生まれること自体が、彼らの音楽観をそのまま物語っていると言ってもいい。ジャンルや音楽性などなどによる「括り」が彼らを位置づけるのではなく、ローファイ・ヒップホップもオルタナティヴロックもUKインディーもソウルも同線上で食らっていく態度自体が、音楽の一切に線を引かないバンドの位置付けになっていくのである。あらゆる音楽に固定概念を持たない日本発だからこそ生まれ得る、軽やかな音楽旅行。それがMonthly Mu & New Caledoniaなのだ。

達人「音楽仲間と下北のガストで飲んでた時に、次バンドを組むならどんなバンド名にしよう?っていう軽い大喜利になったんです。で、中学校の時に読んだ本に、『この単語とこの単語は絶対に横並びにならないだろう』っていう内容のものがあって。そこで、月刊ムーとニューカレドニアっていう単語が浮かんで。このバンドの音楽って、その発想に近いと思ったんですよ。『超常現象』と『実在する天国に一番近い場所』なんて横並びになっても違和感しかないじゃないですか(笑)。だけどその違和感こそが個性になるし、僕らがやりたいこととしても、水と油でも混ぜていいじゃんっていうことなんですよね」

2019年3月にライブ活動を開始した彼らだが、『りんご音楽祭』への出演や、『出れんの!? サマソニ!? 2019』のファイナリスト選出など、ルーキーイヤーとは思えない速度で階段を上がってきた。「節操のなさ自体がこのバンドの在り方だ」と先に述べたが、その実、楽曲そのものが散らかっているわけではない。たとえば“Valley”。打ち込みのビートから緩やかなギターサウンドへ接続し、幻想的な靄のかかった歌がじっくりと昇っていく。その音楽パレットに並んだ要素は多彩だが、中域のまろやかな音作りからもわかるように、HIP HOP以降と言えるサウンドデザインと歌の立たせ方に、あくまで現代的な王道を闊歩する気概を感じるのである。コアに潜ることなく、あるいは好き放題で終わる気もなく、多彩な音楽から「歌を飛ばすための構造」を吸収しているのがこのバンドなのだと理解できるだろう。

龍行「人の人生を変えてしまうほどの力は、音楽にはないと思ってるんです。現実として、音楽がなくても普通の人生は送れる。だけど俺たちがプレイすることで人の心を動かすことはできるんですよね。その結果として、人がどうするか。その行動に至る感動をもたらすことは可能だと信じてます。だからこそ、どんなに要素が多かったとしてもストレートに伝わるものを目指してるんです」

夢大「昔と違って、ストリーミングサービスやインターネットを使ってたくさんの音楽を並列に吸収できる時代じゃないですか。HIP HOP好きな人がHIP HOPだけ聴いてるわけじゃない。だからこそ、いろんなものが混ざっているのが好きっていうほうが、むしろ自然体だと思うんです」

龍華「それこそHIP HOPの発想や手法に近いところがあるんですよね。有名なトラックをサンプリングして、UKロックやUSのサウンドの上に入れてみました、みたいな。それをごく自然体でやっているのが、このバンドだと思うんですよ」

インターネットを通じて音楽を摂取してきた彼らの世代にとっても、現行の音楽シーンを見渡しても、もっと言えば、音楽を取り巻く世界の現状にとっても、「ミクスチャーであること」こそがむしろ先天的に埋め込まれたテーマなのだろう。バンドを組んだから混ざるのではなく、混ざること・混ぜることを面白がりたいからバンドをやる。そんな5人であることが音から伝わってくる。じっくりとしたグルーヴに体を揺らしながら<Why don’t you feel?/色彩のブルースが絡み合って>と歌う“El Sol”は、まさにこのバンドの音楽観そのものを表現した楽曲と言っていいだろう。覚めるまで踊ろう、暮れるまで踊ろうと訴えるのは、何一つ同じではないものがそのままの姿で混ざり合い、そこにいるだけで存在が証明される一瞬に辿り着きたいからなのだと思う。

夢大「僕は中学まで海外に住んでいて、いくつかの国で生活していたんです。それで日本に帰ってきてから音楽を始めたんですけど、最初の頃から、売れたい、評価されたいっていう気持ちも持ってて。だけど結局は、今会いたくても会えない人にも自分の存在が届くように曲を書くとか、今たくさんあるツールで拡散することによって自分の存在を証明したいとか、そういう部分に理由があるんだろうなって思ったんですよ。作品は、僕らが死んでも残る。生きている証拠を残したいから音楽を作って、歌にしているんだと思います」

夢大の言葉を聞けば、インターネットを通じて知り合い、それからすぐに意気投合してバンド活動がスタートしたというエピソードも腑に落ちる。彼らの存在証明のベクトルは、初めから「ここ」に留まるものではなく、瞬時に人から人へアクセスできるようになった今の時代のネットワーク全体に向けられているのである。

龍華「大きな話になりますけど、日本をジャックしたいんですよ(笑)。5人の通ってきたカルチャーが全然違うからこそ、音楽だけじゃなく、本や映像、アートまで網羅する場所みたいになれたらいいなって思うんですよね。まあ、これは新宿PePeの大きなスクリーンで何かの先行上映会をやっているのを見かけて、そこに集まっているお客さんたちが街をジャックしてるみたいだったから思いついたアイディアなんですけど(笑)。自分たち5人の個性も、その規模までいける武器になったら面白いなって思います。だから……まずは新宿をジャックしたいですね!」

音楽をやることがバンドになる、バンドをやることが音楽になる――というわけではなく、それぞれの個性が尊重され、それぞれが形を持って輝いていくためのコミュニティー。それが彼らにとってのバンドなのだろうし、同時に「バンド=コミュニティー」としてのスタンスは、音楽的にも編成的にもバンドの定型がとっくに壊れた今において、最もスタンダードな思想だと言えるだろう。なおかつ、上述したようにインターネットがもたらした「人へのアクセスのしやすさ」の一方、繋がりへの枯渇と孤独が深まっていく時代でもある。そんな中、存在証明を果たすための居場所としてこの5人が作り上げたのがMonthly Mu & New Caledoniaというバンドであり、コミュニティーであり、その名前の通り「予測不能」な秘密基地なのだ。言うまでもなく、予測不能なものほどスリリングだし面白い。最高の可能性だ。

text by 矢島大地


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