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Liner Notes -1st EP『Prologos』-

『まるでお気に入りのプレイリストを更新していくかのよう』
– Monthly Mu & New Caledonia 1st EP『Prologos』ライナーノーツ-
Text by Kento Mizushima

2020年代、音楽はもっと自由に進化し、ジャンルという壁はどんどん崩れていくだろう。Monthly Mu & New Caledoniaはそんな予兆をこの東アジアの島国でいち早く表現しているバンドだ。

出会いはインターネット。バンド掲示板でヴォーカル、門口夢大が「ローファイ・ヒップホップ」をテーマにバンドメンバーを募集し、出身地もバラバラの門口夢大(Vo.)、鈴木龍行(Gt.)、若林達人(Gt.)、小笹龍華(Ba.)、武亮介(Dr.)の5人が集まったのがMonthly Mu & New Caledoniaだ。

銀杏BOYZ、The Chemical Brothers、Dream Theater、Sum41、Kissと5人のルーツは多種多様。各々がバラバラなルーツを持ち、ストリーミングサービスなどで誰もが簡単にあらゆる音楽を吸収できるようになった“今”だからこそ生まれたバンドだ。今回リリースされた彼らの1st EP『Prologos』は4曲それぞれ全く別のサウンドを鳴らし、Monthly Mu & New Caledoniaが“音楽性”に縛られないバンドだという意志を強く示した作品。

今作の為に1から書き下ろされた「おどけて」はR&Bにも通じる滑らかなギターやパワフルでスピーディーなリズムなど、今までリリースしてきた楽曲でも表現していた彼らの特徴を出しつつ、何度も書き直し、試行錯誤の上でようやく完成したという壮大なサビのメロディーで完全に新境地に辿り着いた曲だ。この唄メロが耳から脳内にたどり着く頃には、下北沢のライブハウスから一気にUKのスタジアムへとトリップさせられる。それくらいのインパクトを放っている。

EP制作は思わぬ形ではじまった。誰も予想していなかったパンデミックが起きたからだ。今でも世界中のアーティストの活動が制限されているが、結成から着実に階段を登り続け、これから更に加速しようとしていた彼らの活動も例外ではなかった。バンド活動が止まっていた時期もあったという。それでも前を向き、EP制作に取り組み、完成させた『Prologos』には以下のようなコンセプトがある。

「俺らがこの状況の中で歌うのであれば、少しでもいいからポジティブなことを唄にしたかったんです。そんなことを考えていて頭に浮かんだのが『混沌に侵食される日々や人たちに対してのアンセム・賛美歌』という今回のEPのコンセプトで」(鈴木龍行)

Hey
We get it
Don’t worry about anything
”歩み続ける今も 辿り着くんだ”

*M-1「おどけて」リリックより

「おどけて」の壮大なサビのメロディーに乗せられ、門口夢大が歌っているこのリリックは“出口がないトンネルはない”じゃないが、まだ世界的に先が見えにくい中、1人1人が前を向くためにも今一番必要な言葉ではないだろうか?

誰もが知るように2020年はライブが出来ない日々が続いたが、そもそもMonthly Mu & New Caledonia は結成からりんご音楽祭に2年連続で出演し、様々なDJやオーガナイザーからも信頼されイベントに呼ばれるなど、ライブに定評があるバンドだ。

今作の中でも「U&F」はライブの定番曲として披露されてきた曲だが、音源化されたこのタイミングでライブアレンジ以上にアッパーな踊れるダンスチューンに進化した。セクション毎に変わるビートやムーディーなギターソロからジャジーなアレンジまでが詰め込まれている曲だ。

こうやって字面で見るとゴチャゴチャしているような多種多様のアレンジを1つの楽曲として成立させ、その中で生まれる音楽的違和感を=これがMonthly Mu & New Caledoniaのカッコよさだよな!と納得させてしまうのが彼らにしかない武器。そして各々のパートがカロリー高めに演奏しているにも関わらず、最終的に何よりも耳に残るのが“門口夢大のヴォーカル”であること。これは無我夢中に好きなモノを詰め込んでいるだけではなく、好きなことをやりながらも、どうやったら自分たちの音楽を多くの人に届けられるかを一番に考えている証拠であり、筆者が彼らの可能性に期待しかできない最大の理由だ。

「誰もが思っていても簡単には口に出せないことを唄いたくて、そういったメッセージを伝えるためにシンプルにしたかった。」(門口夢大)

というテーマを元に制作された「台風が去った夜に」は前2曲とは違い本当にストレートな曲で、日本の特有の壮大でエモーショナルなギターロックを鳴らしている。

タイトル通り日本列島を襲った大型台風について書かれた曲だが、この“台風”というのはリリックでも記されている“日々の不安”という誰しもが直面するはずの葛藤に置き換えられる。ぜひ、あなたが直面していることを思い出しながら聴いてみてほしい。

雨降り降りしきるこの街で
僕ら夢を見ようぜ
雨降り降りしきるこの街で
夢を叶えてこうぜ

*M-3「台風が去った夜に」リリックより

仕事を辞め、名古屋から一人上京し、誰も知り合いがいなかったという門口夢大のネット募集によりスタートした彼らが唄うからこそ説得力がある“安心”ではなく“勇気”をくれる応援歌だ。

ラストの「Pawn Fawn」で唄われているように、時には迷い、遠回りをして進んでいくこともあるかもしれない。ただ、そんな道中で新たな仲間を見つけ、シーンの壁を壊しながら、たどり着いた先の光景は他のバンドが見たことのない景色だろう。

“各々の個性が出てないとバンドをやっている意味がない”そう言い切った門口夢大、鈴木龍行、若林達人、小笹龍華、武亮介による5人組、Monthly Mu & New Caledonia。

まるでお気に入りのプレイリストを更新していくかのような彼らのバンドスタイルは、今後の日本の音楽シーンにおいても一つの基準になっていくだろう。

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